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●お話
彼女は、少年の姿で僕の前に現れた――恋愛小説の名手が贈る心震える物語
友人の自殺のため、船員学校を休学した雄次は、ある日、ショートカットが似合う野性的な少年に出会う。だがひょんなことから彼の秘密に気づき……。海辺の町を舞台に、傷ついた心が再生する姿を描く感動作。
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●感想
最近、
東野圭吾、有川浩、辻村深月、
このお三方しか読んでないので、
たまにはいつもと違う作家さんで
サスペンスじゃないのを読もうと思い、
比較的最近発売の文庫で評価の高いのを
適当に手に取ってみた。
・・・だけど、
こういう表紙だし、
こんなタイトルだから、
奇跡を前面に押し出した
小洒落た物語だったら嫌だなぁ
・・・と、
思いながら読んだけど、
結論から言うと「奇跡」は起きない。
「こんなに良いことが続くと、まるで奇跡だね。」
・・・というお話でした。
物語は、
大きな心の傷のある3人が主なメンバーで、
●地元に逃げ帰ってきた青年、
●死んだ両親の生まれた町に逃げてきた少女、
●誰も知らない町に逃げて来たおっさん、
(主役は上の2人で、おっさんは重要な人物)
この3人が、
偶然に同じ町に同じころにやってきていて、
自分が唯一できることを仕事に、
毎日を精いっぱい、
でもひっそりと生きているのだけど、
この3人の仕事が偶然にも関連する職業で、
小さい町で関連する職業だから、
必然的な出会いがあり、
3人とも目立たないけど良い仕事をするので、
実はとっても相性が良い。
・・・というのが分かり、
少しずつ関りが深くなってきて、
助け合いながら仕事をしていくようになり、
それがまさかの
想像を超える大きな成功に繋がっていく。
・・・みたいなお話。
もうね、
月9や火10みたいな感じの話。
心に傷のある人たちの物語だから、
どうして傷があるの?
・・・という謎はあるものの、
サスペンスじゃないから、
誰も死なないのはもちろん、
恋愛物語だけど昼ドラじゃないから、
不倫とか三角関係もなくドロドロしてないし、
衝撃的なことは本当に何も起こらない。
でもそのね、
イケメンなのに奥手で20歳代の青年と、
男性恐怖症で高校中退した女子高生の少女が、
中学生みたいなピュアな恋愛をするお話
・・・でもあるの。
もしもこれが、
学園恋愛物語だったら、
ピュアすぎて背中がかゆくなりそうだけど、
男性の方は
おじさんに近い感覚や年齢の青年で、
心の傷が理由でピュアになってる感じだから、
そんな設定がワンクッションになって、
ピュア同士の恋愛でも背中がかゆくならずに
共感しながら見れたんですよね。
それに、
2人とも心の傷があり、
互いに相手を気遣ってはいるけど、
傷を舐めあうようなことはせずに、
2人が一緒にいることで、
自然に少しずつ傷が癒されていく展開で、
そういう流れも、
読んでいてリアリティがあるし、
展開に強引さがないのも
読み心地がとても良かったです。
少女の、
まだ互いに告白もしてないのに、
キスをしたから恋人・・・という感覚には、
いくら何でもピュアすぎて若干引いたけど、
でもその頃には青年も好きだったから、
結果良かった。
久しぶりに、
キュンとしました
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