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●お話
東野圭吾の最新長編書き下ろしは「家族」の物語。
「死んだ人のことなんか知らない。
あたしは、
誰かの代わりに生まれてきたんじゃない。」
ある殺人事件で絡み合う、
容疑者そして若き刑事の苦悩。
どうしたら、
本当の家族になれるのだろうか。
閑静な住宅街で
小さな喫茶店を営む女性が殺された。
捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
災害で二人の子供を失った彼は、
深い悩みを抱えていた。
容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。
~Amazonより~
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●感想
俺の大好きな加賀恭一郎シリーズは、
前作の、
シリーズ10作目「祈りの幕が下りる時」で、
完結したはずなのに、
予想外の新作発売で超嬉しい!!
・・・と思って、
早速買って読み始めたら、
今回は「加賀恭一郎」が主人公ではなく、
実写映画では溝端淳平さんが演じている
加賀恭一郎の従兄弟
「松宮脩平(しゅうへい)」が主人公の物語でした。
でも個人的に、
シリーズの中では今回のお話が一番好きでした。
今回は、
いつかの家族が登場するのですが、
全ての家族が、
親と子の間で複雑な繋がりを持っていて、
それぞれ異なる理由の複雑な繋がりがあり、
タイトルにある「糸」は、
そうした繋がりを表現しています。
私がこの作品を一番好きだと感じた理由は、
実は私自身、
自分の親と複雑な繋がりがあり、
登場人物たちに共感出来る部分が多かったのと、
あとは今回の事件、
殺人なので悲しい事件ではあるものの、
全ての真相が明らかになった際に、
(犯人も被害者も含め)
不幸になる人より、
幸せになる人の方が多かった印象なので、
読後感が良かったことも、
一番好きな理由に大きく影響しています。
物語ですが、
とある喫茶店の女性店主が殺害されました。
女性店主は50代前半で、
離婚歴はあるけど子供はなしで現在も独身。
近所の人や常連客などに聞き込みをしたけど、
聞いた人全員からの評判が良く、
女性店主を悪く言う人は1人もいないから、
とても気が利く良い人らしくいので、
どうやら怨恨ではなさそう。
周辺の防犯カメラを調べても怪しい人物はなく、
強盗や通り魔、変質者などの線でもなさそう。
なので、
いくら調べても全く手掛かりのない中、
常連客の一人の男性に不思議なところがあり、
藁をも掴む思いでその男性の捜査を始めていく。
そしてそれと同時期、
殺害時刻にアリバイはあるものの、
被害者の元旦那にも怪しい点が浮上をしてきた。
また、
事件とは無関係だが松宮脩平にも問題が生じる。
幼い頃に死んだと聞かされていた父親の、
娘を名乗る女性から突然の連絡があり、
会って話したい!と言われる。
真意を確かめるべく母親に聞くが、
母親がまさかの黙秘をするので謎は更に深まる。
今更父親が・・・と言われてもピンとこないが、
母親が黙秘をする理由が気になるため、
松宮脩平は仕方なく、
その女性と会って話をする決断をする。
ぶっちゃけ!
加賀恭一郎も複雑な親子関係だったのに、
従兄弟の松宮脩平まで複雑な家庭環境の設定は、
さすがにちょっとやりすぎに感じたけど、
事件の真相も、
松宮脩平の父親問題も、
全てを知ると感動の物語で、
心がとても温まりました。
ただし、
過去の作品とは、
大きな繋がりがないとは言えシリーズモノなので、
この話だけ読んでも感動は薄いから、
出来れば、
加賀恭一郎の親子関係が分かる、
シリーズ7作目「赤い指」
シリーズ10作目「祈りの幕が下りる時」
この2作を読んでからこれを読むと、
より大きな感動が得られると思います。
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