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●お話
1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。
~シネマトゥデイより~
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●感想
レンタルしました。
人と半魚人の恋愛映画ってことで、異色のファンタジーというか、ちょっとグロイ感じもあるのかな?・・・と、想像していましたが、意外とその恋にはリアリティを感じて、想像より何倍も素敵な恋のお話でした。
ギレルモ監督って、もっと個性が強く、大雑把に展開する(日本でいう三池監督みたいな?)映画しか作れない監督さんかと思ってたけど、こんなに繊細な映画も撮れるんですね。
この映画は、
生まれつき声の出ない女性と半魚人が恋をする・・・という設定だけど、
見ていくうちに半魚人が少しずつ人間味を帯びて見えてくるのと、声の出ない女性の設定も、友達が少なかったり、隣人の孤独なゲイの老人と半同棲みたいな生活をしていたり、普通の恋はなかなか出来にくいような環境にいて、自分でもちょっと諦めているような設定なので、そんな主人公が、次第に半魚人に恋をしていく過程は、思いの外自然な流れでした。
時代の設定は1962年と古いです。
主人公の仕事はアメリカ政府の研究施設で働く清掃員の一人で、その施設の一室にある日、研究対象として半漁人が運ばれてきます。その部屋を掃除する途中で、その半魚人と偶然接触した主人公は、最初は興味本位から、自分のお弁当を餌付けの感覚で、隠れてこっそり分け与えますが、意外と人間らしい見た目や反応があり、それが面白くて、それからお昼休みをその部屋で過ごすようになり、音楽を聞かせたり、手話を教えながら、半魚人との関係を少しずつ深めていきます。
時代の設定が古いので、セキュリティーはあるけど相当甘く、だからこそ、こういう出会いも可能だったのかも?・・・と思わせます。
他にもいろいろと、
二人が恋に発展していくのを不自然に見せないための、細かい前フリや演出があり、見ているうちに二人の関係はどこか、「大人の女性の恋と、少年の初恋」・・・みたいな、そんな雰囲気にも見えてきて、昔はそういう映画がよくあったけど、少年ではなく半魚人だし、新しいけど懐かしいような、そんな恋愛映画でした。
そして、最後まで気づかなかったけど、映画のタイトルが最後に出てくるのも、出てくるタイミングも含めて、粋な演出に感じました。
あとは音楽も良かったなぁ。
劇中の音楽も良いけど、エンディングがまた良かった。
映画が良い感じに終わり、強い感動の余韻に浸っていると、そんな俺の余韻の波長と、同じ波長の音楽が流れてくるので、エンドロールの終わりまで、気分よく見終えることが出来ました。
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この映画の「恋」が、
なぜ、こんなに素敵に見えるか
よくよく考えると、美女と野獣みたいな映画もあるので、人とモンスター(?)が恋をする映画自体、特別に斬新な訳ではありません。
●二人の距離が縮まる過程
美女と野獣の野獣は、人が魔法で野獣になったし会話も出来るから、モンスターというよりも、最初から「人」に近い認識ですが、この映画の半魚人は生まれつき半魚人で、妖怪の部類。女性(主人公)も、最初は「(大きな)ペット」に餌付けしている感覚だし、でも、シルエットが人に似ていて、人のような反応をするから、次第に、言葉の通じない外国人とか原住民とかと接するような感覚になり、いつしかそれが恋に変わっていきます。
でもそれだけではなく、主人公が、半魚人に本気で恋をしていると知っても、主人公の友達は、一切「気持ち悪っ!!」みたいな反応を見せず、主人公の恋話を、まるで人間同士の話を聞いているような反応を、当たり前に見せるところも、ポイント高いと思います。
●半魚人のキャラデザイン。
絵描きでゲイの老人も、実物を見る前は気持ち悪いモノを想像していたのに、実物を見て、こんなにキレイなのか?と発言してましたが、その老人の発言にもしっかりと共感出来る、神秘的なデザインなんですよね。
●恋のキレイさの基準?
あえてわかりにくく見せているので、気付かずそのままスルーしちゃう人もいるかもしれないけど、物語は、主人公(女性)の一人エッチから始まります。
でも不思議と、いやらしいとか、気持ち悪いとか、見ていてそういうのは全くありませんでした。他にも、そういう感じのシーンがいくつかあるけど、まるで、生物が恋をするってそういうことでしょ!!!・・・みたいで、「恋」を「お洒落に着飾る」のではなく、「自然で純粋な」ありのままの恋・・・そんなところを、素敵な「恋」と感じたのかもしれません。
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